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目の前で短刀取りを見て、警察官たちはどう思ったんだろうか? という質問に


武道始式

【出稽古に来た人からの問い】

先日、出稽古に来てくれた他道場の人と、帰りの電車の中でいろいろ話してた。養神館の他に、極真空手もやっている人で、濃いオタク話が出来るので面白い。

入り身突きと正拳突きの身体の使い方の違い、みたいな話から、こんな展開に。

私より先輩で年上で、あなたと同じように養神館と極真とをやっていて、両方とも弐段とか三段だったんだけど、いつの間にか総合までやりだした人がいたんですよ。みたいな会話から始まった。

その人の正面突き腕絡み投げの仰向け抑え。上級者は一緒に落ちて抑え込むようにと言われるけれども、私がすると受の胸の上にドンと落ちて、肋骨を折りかねない。その人は巻き込むように飛んで落ちて、受にダメージが少ない。とてもスムーズな動きで、総合やってることが垣間見れた。

極真の初段審査のときは、土日前後に有休とって7日間で備えたとかも聞いた。かつては、それぐらいのヤバさだったそうで、10人組手した翌日から仕事に行ける人なんて皆無だとか。なんて話も聞かせてくれた。

普通のサラリーマンで出張もしてたんだけど、それでも週に三日は稽古してると言ってた。そういう人って、だいたい温厚。その人もとても温厚な人で、そこまでハードなことをしているようには見えなかったんだけど、あるときぷっつり稽古に来なくなった。

しばらくたって偶然、仕事中に都心で出くわしてどうしたのか聞いてみたら、腰を痛めたという。歩くのもつらい。通勤電車もつらいと。いやぁそんなの過負荷だから、色々とやり過ぎない方がいいんじゃない、と言ってたのに。という話をした。

日本の伝統的な武道は、腰を捻らないと言われてる。合気道は、腰を捻らない。特に養神館合気道は手足腰の一致した動きだから、徹底してる。

総合の体系は知らないけれども、ブラジリアン柔術では、けっこう捻ってるように見えました。

グレイシーアカデミーで、全盛期のホイス・グレイシーにインタビューしたことがあって、待っている間、いろんな人の稽古を間近で稽古を見たんです。打撃もだけど、やっぱりさまざまなリスクがある。

空手では、上段回し蹴り自体が腰に良くないでしょう。腰椎はあまり回転しないんだから。前蹴りならハイでもそれほどでもないと思うけど。

筋肉でしっかり支えて、ストレッチをしっかりすれば大丈夫だというけれども、打撃系の団体の中には上段を蹴るために柔軟性を重視するあまり、やりすぎて指導者が20代30代しかいない。なんて話もあるぐらいで。

歴史が浅いからじゃなくて、40歳以上は何かしら腰や股関節に問題を抱えていて、出てこられないとか。

だから、40過ぎたら回し蹴り系は、中段下段にしとくのが無難。だと個人的には思う。故障しちゃったら、なんのために鍛えてるのか分からないし。

みたいなことを喋っていたら、不意に「合気道で短刀を相手にできますか?」と聞かれた。ああ、短刀…

【稽古しているのは、あくまで理合い】

それは、本物の短刀? いや、短刀だろうがナイフだろうが、本物を持って来られたら対処できないと思うよ(笑) と答えた。

すると「警察署で演武されてたじゃないですか」「警察官たちは、実際そういうことのプロじゃないですか。演武見てどう思ったんでしょうか?」と。

あ、YouTubeで見たの? あれはね、4日前ぐらいに出るのが決まって、武道始式のために準備するもなにもないから。あのころ個人的に追求してたのが短刀取りでだったから、単純に短刀取りにするかなと。

だけど、どうかな。確かにプロの前でやっていいのか、僭越だし、バカにされるんじゃないのとは、ちょっと思った。ってことが聞きたいんでしょ?(笑) 

でもそんな機会、まずないからね。かなり緊張したけど、気負いはなくて、むしろプロの人たちを前に演武して、突っ込んでくれ。リアルなフィードバックをください。ぐらいの気持ちだったよ。

武道始式

「なんて言われました?」と聞かれたので、いやいやそんな時間ないし、そんな雰囲気でもないし、親しくもないし。

するとさらに「そこは聞いてくださいよ〜」と言うので、SNS上なら元警察官の知り合いは何人もいるし、道場の代表者で元警察官もいるけど、何も言われたことはないよ。

演武したのはマンモス署だけど、あそこで本物の刃物を、ひとりで相手したことある人は、さすがにごく少数でしょう。通報があったら複数で行くのが鉄則だろうし、いきなり襲われない限り1対1はないはず。

それに逮捕術の稽古では、必ず防具を装着しているはず。素手素面で刃物に立ち向かうのは、いくらなんでも無謀でしょう。

養神館の大会では警視庁の人たちが、よく短刀取りもやってるけど、実際に刃物を振り回してる人に素手素面であっても立ち向かえと言われるわけじゃないと思うよ。あれだって、どうしてもやらなきゃいけない場面に遭遇したときの備えだったり、複数で押し込んでも刃物の取り上げ方を稽古してなかったら、取り上げるだけでケガする確率が上がるじゃない。

私だって短刀取りを、自分でこういうやり方もで出来るんじゃないかと稽古してたら、先生から「それはこういう取り方があるんだ」と教えていただいて、おお なるほどと思ったよ。教えてもらわなきゃ、自分じゃたぶん思いつかない。稽古してたから、教えてもらって理解出来たわけで。

っていうか具体的な技術もあるけど、度胸というか胆力というか、もしものときに落ち着いて対処するためのメンタルトレーニングの側面も大きいと思うけどな。

というようなことを答えました。

演武させていただいたのは、神奈川県警の川崎警察署。合気道が正課ではありません。もしかしたら私の演武を見た警察官たちは、そんな上手く行くかよと思われたかもしれません。

一番前の席の両サイドには剣道師範と柔道師範が座られていて、さらに短刀対素手の競技がある富木流の若い警察官ふたりが見ているのですから、かなり厳しい目でチェックされたでしょう。

でも私にとっては、それが絶好の機会だったんです。これほどメンタルを鍛えられる場面はありません。大会で短刀取りをやったときより、数段緊張してました。

実際に刃物を出されて動ける可能性があるかどうかは、技術より先に、まずメンタル。かといって本物の刃物を相手に、精神を鍛えるなんてことしたくありませんし、できません。

奥さんが包丁を持ち出して突きつけられたら、身動きできないかもしれません(笑)

それに動けたとしたら、クッションでもお玉でも取って対応すると思います。(笑)


私は万が一、刃物に遭遇して逃げられなかったら、合気道をやっているのだから素手で立ち向かうなんて発想はありません。



合気道の稽古で、短刀や剣を相手にしているのは、あくまで稽古。安全性を最優先した稽古。こういう設定なら、こういう理合いが成り立つということだけです。本物の刃物を対処できるようにしたいなら、本物の刃物を使うか限りなく現実に近い稽古をしないと。

だって思わない? 突きだって、突きの稽古してない人の突きを捌いたところで、どれぐらいの現実性があるのかどうか。やってる人同士が本気でやっても、来るのが分かってる追い突き一本じゃまず当たらないでしょう。と、こういう理屈は、複数やっている人には伝わりやすい。

どういう稽古の仕方をするかは、自分次第のところもあるけど、でも相手が必要な環境って、自分じゃあほとんど左右できないからね。チャンスがあるなら、やってみなきゃ。

合気道での短刀の扱いは、突き、正面からの斬りつけ、逆手に持っての横からなどの設定があります。実際に刃物を持った犯罪者なら、ムチャクチャに振り回すかもしれない。

刃物の扱いに習熟しているなら、フェイントだってするでしょうし、本気なら持っていることすら悟られないように隠して、いきなり斬りつけてくるかもしれません。出しても長さを悟られないようにするかもしれません。

私たちが稽古できるのは、木とかゴム製で、長さが分かっていて、突き方斬りつけ方が決まっているから稽古ができる。

そのあたりにご興味があれば、以前にも書いていますので、こちらをどうぞ。

元警察官で養神館の道場をやっている人は、合気道で入り身突きを稽古したから、逮捕術技法での入り方が分かったと言っていました。

またニューヨークから出稽古に来た人は、こんな興味深いことを言っていました。

【武器には、それを上回る武器をのニューヨーク】

稽古が終わって着替えながら、最近ニューヨークでは合気道やほかの武道はどうなの、盛んですかと聞くと、うーんどうでしょう。一時期、やっぱりブラジリアン柔術がいっぱいできましたけど、ジュリアーニ市長以降、空気が変わったかもしれませんねと。

ああ、ジュリアーニ元市長。現トランプ大統領の顧問弁護士で、ウクライナ疑惑の中心人物だと言われたり、いろいろと強権的なやり方や疑惑があったり批判の多い人だけど、割れ窓理論を実践してニューヨークの治安を回復させた功績があるとされている。

確か9.11を境に、治安回復への評価が高まったとか。とにかく2001年の同時多発テロ以前に検事からニューヨークの治安を回復を公約に立候補して、市長に当選した人だ。

日本ではあまり言われていないが、割れ窓理論で治安回復させようとしても、それまで警察官の死亡率が高く、警察官の給与をいくら上げても、なり手がどんどん減っていったそうだ。

そこでジュリアーニ市長がとったのが、刃物を出されたら銃で、銃を出されたらマシンガンで。とにかく相手の戦闘力を上回る武器を持って立ち向かうという方針。それによって、警察官の死亡率は下がり、治安も回復していったということらしい。

銃なぁ。銃社会である限り、銃犯罪は当たり前に起こるだろうし。警察官のなり手が少なくなれば、犯罪はさらに増える。犯罪者の持つ武器を上回る武器を持って対抗するしかなくなるのは、現実的な流れ。

そんな影響もあり、「ニューヨークで武道や格闘技をやる人たちは、本職の人たちも実戦性を言わなくなってきたし、求めなくなってきたかもしれないと。あくまで趣味とか好きだとか、健康のための運動としてだとかになってきた」んじゃないか、とのことでした。

だけど日本でも、実戦性を求めてるのはごく少数だと思うし、きっと趣味の人が圧倒的。

私だって、求めているのは何より動ける身体とメンタルを鍛えることですから。逆に、もし動けない身体でメンタルが弱弱あるいはブラックで、技術だけを持っていたとしたら、どうですか?

合気道はやらないより、やった方がマシ。現在の自分より、明日の自分を向上させるため。もしかしたら何かしら役立つかもしれない。そのためには安全に稽古できて、少し無理すれば可能な範囲のことは稽古する。あまりにリアリティのないことはしないというスタンスです。

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