武道としての合気道
日本に世界に、武道や格闘技と呼ばれるものは無数にあります。しかしその中でも合気道は、希有な存在であることは間違いありません。
格闘技、そして武道の競技は精神的肉体的なリミッターは外し、アドレナリンを噴出させることが必須になっているものがほとんどです。多くの合気道は、その対極にあります。
さまざまな合気道の中で
合気道には、さまざまな流派があります。養神館をお作りになった塩田剛三先生は、中心力(中心線に集中する力)が重要だとされました。
養神館合気道では構えることで、中心力を養っています。ほか基本動作など、筋力ではない力の出し方及ぼし方の稽古方法が確立しています。観念的ではなく具体的。だから初心者が学びやすく、上達したことが実感やすい合気道なのです。
姿勢を整えることから稽古します
養神館合気道は構えます。剣を正眼の構えを、徒手にしたものです。なぜ構えるのか、その最大の理由は中心力を養うためです。
簡単にいうと中心力は、重力を最大限に味方にするものです。頭・手・足・臍・重心が一線上に乗るように立ち、後ろ足の膝は伸ばします。筋肉は、一線上に乗った軸と構えた腕を維持するための最小の入れ方にします。そのほかをできるだけ脱力すると、落下や倒れ込むエネルギーを味方にすることができます。これが合気道のベースになる力です。
いや合気道だけではなく、生きていて動く根本になる力ですね。
この使い方が上手じゃないと、あちこち痛めたり故障したり、疲れやすくなります。つまり、コストパフォーマンスの悪い身体です。
上達は、逆にコスパのいい身体になることだと言えます。
まず姿勢の力を整える
養神館合気道
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姿勢をピシッときめる
トレーニングにもなっています
筋力がいらない、わけではありません。養神館合気道の構えや技の動作をしっかり決めるだけでも、姿勢を維持する筋力、それも力まずにできるには特にインナーマッスルが必要なのだと思います。
私たちの生活は通勤ラッシュやパソコンやスマホなど、日常的にどこか無理な負担のかかった姿勢になりがちです。
普段の姿勢自体がおかしくなっていれば、骨格の歪みはもちろん、筋肉や脂肪も偏った付き方をしているのではないでしょうか。養神館合気道は、姿勢の力によって技を行うことが重要なポイントです。稽古そのものが、動きの中でも適切な姿勢を作るためのトレーニングになっているのです。
必要なときに、ピシッと姿勢が決まる。そんな合気道です。
腕力ではない力の
使い方を学ぶ
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合気道が女性に向いている理由
合気道の技は力まかせに効かせても、ほとんど意味はありません。合気道の思想以前に、フィジカルで上回る人ならいくらでもいます。
合気道の理想は、力感がないのに崩せたり投げられること。そのためには、自分の姿勢を制御して、有利な位置に入りながら姿勢が生み出す重心移動の力をロスなく相手に伝えること。
ところが力んでいると、力の流れが止まってしまいますし、相手に察知されやすくなります。察知されると力較べになってしまいます。
察知されても、力の出所がわからなければ、対応されにくいのです。だから力むのではなく、力を流す。合気道的には「力を出す」といいますが、単純に表現するなら体を伸ばすのです。
ギュッと力を込めるのではなく、重力を味方に、体を伸ばして相手に伝える。これが比較的簡単に出来てしまうのは、多くの場合、女性です。
力に力で対応するのではない体の使い方は、一般的に女性が圧倒的に得意なのです。
競い合わなくていいのに競ってしまう
一般的に、合気道に試合はありません。試合には功罪ありますが、競技で優劣を競うと、たとえば合気道の動きや力の使い方としては稚拙でも、運動神経の良さや体重や腕力など、もともとフィジカル強者が勝ち進むことが考えられます。また勝つ負けるということになると、ポイントが入る方法に固執しがちです。
本来、武術武道はフィジカルな弱者のためのもの。ましてや合気道は前述のように生の筋力に頼ったり、アドレナリンを噴出させるものではありません。
合気道の稽古は、あくまで平常心で、しっかりとした強い姿勢を維持して行うものです。そう理解はしていても、ついつい力んでしまう。腕力で対抗しようとする傾向が強いのが男性です。フィジカルでなんとかなってしまうと、技の巧みさを追求しなくなりがちです。
女性でも対抗してしまう人はいますが、大概は生の力で対抗できるほど筋力も体重もない場合が多いので、他の方法を探るしかないのです。自分より重い人、筋力がある人はいくらでもいますので、力に頼らない方法の追求は、そのまま護身になるはずです。
自分に軸をつくること、体の地図をつくること
力の使い方の上達は、体の使い方の上達と同じ。自分の体を上手に使うには、感覚的な全身の地図が必要になります。
多くの人は自分が今、どんな風に立っているか。肩甲骨がどうなっているか。肘がどっちを向いているかなど、動きの中での自分の体の状態、いわば体の3Dマップに無自覚です。
というより把握できないし、制御できないのが当たり前。
合気道の上達に求められるのは、自分の全身の地図・3Dマップだけではありません。接触点から相手の体、どういう方向に力を入れているか、重心はどこかなどを感じ取れるセンサーも必要です。
相手に影響を及ぼすには、まず自分が立つための軸、そして回転する軸、力が流れる軸あるいはルートなどが必要です。それらを作ったり消したりすることで、相手に力を出させず、自分の力の流れをおよぼすのに有利な体の使い方を学び、だんだん把握できるようになります。
多くの女性に必要なトレーニングにもなっています
必ず女性ということではありませんが、特に若い女性では筋力不足であったり、関節のゆるい場合が少なくありません。
筋力不足であるなら、いい姿勢かどうか以前に、しっかり立つことができません。立つこと、動くことでも姿勢を支持する骨や筋肉は必要です。これは合気道を稽古するからではなく、生活する上でもケガをしないために必要な強さであるはずです。
一般的な関節がゆるさは、サポートする靱帯をはじめ、腱や筋肉などを鍛えることで、安定性が増すとされています。
養神館合気道の基本動作や基本技は、しっかりとした姿勢を維持し、伸ばす動作や回転する動作で稽古します。稽古自体が必要な筋肉を鍛えたり、靱帯や腱の強化につながります。
今、子供や高齢者の骨粗鬆症が社会的なテーマとして問題になっています。女性の場合は一般的に40歳以上で骨密度が低下し、骨折のリスクが高まるそうです。骨量が最も増す成長期から20歳代に、骨をつくり骨を強化することで、閉経後の骨粗鬆症の予防にもつながるとされています。
強化するには骨に適度な力学的ストレスが重要だとされ、骨粗鬆症財団によると「エアロビクスよりはバレーボール、それよりは重量挙げというように、骨にかかる力が大きく、また繰り返しが多いほど骨を強くする」としています。
なにが適度なのかは人によって異なるはずですが、合気道の稽古、特に受身は骨の強化に適していると言えます。
重力を味方につけた
立ち振る舞い
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重力に勝てる人は誰もいないから
合気道開祖、植芝盛平先生は「天地の理」を説かれたといいます。その意味するところは様々な解釈がありますが、自然のあるがままの法則に学ぶということではないでしょうか。
その中でも、もっとも重要なのはきっと重力。技としても、重力に対抗するのは、ものすごくムダがあります。重力を利用すれば楽に動けます。
利用するためには、まず自分の姿勢を整えて、できるだけ脱力しながら制御すること。頭、胸、腰腹という重い部分の中心を揃えること。養神館合気道では、それに手・足の方向も揃える“中心力”が基本です。
東京で電車に乗ると多くの人がスマホを見て、首を前に倒しています。重い頭を倒しているのだから、それを支えるため、あるいはバランスを取るために、あちこちに無理がきています。仕事ではIT化によって、一日中パソコンを操作して終わるという人が加速度的に増えています。結果、何時間も座ったままで、そのことで死亡リスクが増加しているという研究もあり、警鐘を鳴らす医者も少なくありません。
このライフスタイルの変化によるコリや痛みは、どれだけ筋トレしても根本的には対抗できません。マッサージやヨガをしたところで、一時的な対症療法ではないでしょうか。
一番の問題は、筋肉や関節にある重力などを感じる感覚センサーが衰えていること。ふかふかのソファーやゲーミングチェアに座ると長時間でも平気なのは、深層の抗重力筋を使わないから。感覚センサーが衰え、抗重力筋の機能が低下すれば、歩くことさえ苦行になってしまうかもしれません。
前述の養神館合気道は姿勢の力を整えるとは、これらのリスクを跳ね退けるものだと考えています。日常の立ち振る舞いから、変わっていきます。
また日常が変わらなければ、合気道古を週に何時間か稽古したところで、根本的なところが変化しません。
ご興味が出てきたら、体験してみてください
精晟会渋谷では、見学は受け付けていません。稽古の雰囲気は、下のフッタにある各SNSで公開しています。
稽古はあくまで会員のためのものですが、入会を検討される方に向けて有料の体験を設定しています。1回の体験でどれほど伝わるかは疑問ですが、少なくとも向き不向きは感じ取れるはずです。
もちろん他の合気道の道場と、比較検討してしてください。精晟会渋谷の稽古は、多くの合気道道場とはちがっているところがあります。なによりできる限り1人ひとりに合わせ、無理なく本質的なところで上達する方法を試行錯誤しています。
精晟会渋谷の合気道体験は、下のバナーからどうぞ。リンク先のページでは体験について、その内容や様子もご紹介しています。