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合気道だけやっていても、かなりの運動不足かも



ある会員が私が道着に着替えているところを見て、「鍛えてますね〜、先生」と言ってきました。私は「当たり前じゃん。還暦過ぎて鍛えてなかったら、動けないよ」と答えました。

加えて「鍛えてないで、君の相手なんかしたら壊れるわ」と言いたかったです。なんたってその人は、私の1.5倍の体重があるんですから。自己申告で1.5倍ですから、実際は1.6倍とか1.7倍とかあるんじゃないかと思います(笑)


実際のところ、私が身体を鍛えるのは合気道のためじゃない。

私は合気道をやっていなかったとしても、生きていく上で、(前回のブログで書いたように、それほど区別していないんですが)有酸素、筋トレ、調整、そして動きの質を高めることは不可欠だと考えています。


なぜってそれは、衰える一方だから。

いや本当に(笑)



加齢はもちろんですが、いま日本人の多くが運動不足なのかもね、という気がしています。

渋谷合気道会の会員でも、稽古以外に運動している人は、めちゃくちゃアグレッシブに運動している。でも故障したり、合気道をやる上でマイナスになりそうな人もいる。



稽古以外のことにあーだこーだと口出しするつもりはないですし、私の責任外のことだと思います。でもさすがに、故障したり、危険だということをやっていると思えば何かしら言います。

ある有段者が足を痛めて、何ヶ月も治まらないと。どうしたのか聞くと、HIITをしていて効率を高めようとウエイトを持ってやっていたら、ということでした。あー、それは無茶な。

高効率を求めると、やりがちです。トップアスリートなら、ギリギリを攻める必要があるだろうけど、そんな危険なことする必要ないでしょう。




合気道をやる上でマイナスになりそうなことは、一応アドバイスはします。何かするならプラスになることをと考えますが、人によって身体は千差万別。ふにゃふにゃな人から、ガチガチの人まで。


ある初心者が体を大きくしたい、どう思うかと聞いてきて。別に個人の趣向だからいいと思うけど、あなたはマシンかウエイト持ってやってるでしょ? 稽古したときの身体の反応がバラバラで変なのは、たぶんそのせい。りきみ体質だと、上達は難しい。


座りすぎが原因の腰痛持ちの人たちの多くは、筋力が圧倒的に不足しているよう。いくら姿勢を良くしたところで、それを維持するのは体幹の筋肉。ゲーミングチェアみたいな高性能なのを使って楽になっても、それは骨折したときのギブスと同じかと。支えられている分だけ、脊柱起立筋など抗重力筋がどんどん衰えて、自分の筋力で姿勢を維持できなくなるよ。


みたいな話は、頻繁にしています。




筋肉量は、一般的に20代半ばでピークを迎え、何もしなければ30歳からは減る一方だとされています。いやいや筋肉量だけではないんです。

脳神経外科医のサンジェイ・グプタ博士の著書『たった12週間で天才脳を養う方法』には、脳の老化についてこんなことが書かれています。ウソくさい日本語の書籍名ですが、原題は『Sharp Brain』です。引用します。


私たちの脳の老化は20代半ばから始まり、30歳になる頃には構造的な劣化が始まることを覚えておく必要がある。40歳を過ぎると、海馬は1年に約0.5%ずつ縮小していく。

ということです。ざっくり言えば、それを何とかしてSharp Brainを保つには運動をするしかないということです。

そのあたりのことは、『それじゃあ、どれだけ運動すればいいのか?』に書いています。



今回は、このところ会員と会話した内容から、参考になりそうなことを書いて行きます。

構成は、運動不足の問題から、動きを鍛えるための方法へと、極端から極端へとなっています。

鍛え方は後半、EMSの話題のあとです。


まずは、前置きから。私が思う前提から書いておきます。




アイドルの身体をなめちゃいけない


いまやオフィスワーカーの多くがモニター越しの仕事で、目と指しか使っていない時間が圧倒的になっています。暇つぶしもスマホだし、なんだったら脳もそんなに使わない生活になっているのかもしれません。



初めて合気道をする人で、体験に来られる方の中には、今はまったく運動していない。運動習慣として合気道はどうだろうかと考えて、来られる方は少なくありません。


とてもいいと思います。

身体の使い方として合気道を学び、それをベースに身体を使うようにしていけば、です。

よく「合気道は誰でもできる」というフレーズが使用されます。受け身をしなくてもいいという道場もあるそうです。私は「あ〜あ、そういう道場に行っても、健康の役にも立たないのにな」と思います。運動をまったくしていない人が、あるがままの今の自分でやれてしまうなら、運動習慣にもなんにもなりません。

少なからず自分で鍛えることが必要になります。そのキッカケとしての合気道なら、とても有益だと思います。合気道をやるんだったら、道で転んでも大丈夫。怪我しない、ぐらいの自信が欲しくないですか?



もし剣(木刀)を構えたり振るのが重いと思うなら、いろいろ足りなさ過ぎるのです。テニスをするのにラケットが重いと感じるなら、テニスをする以前の問題です。もちろん骨格で正しく持てれば、筋力はほぼゼロですが、それぐらいは筋力で持てなくてはマズイ。

合気道やテニスをするのに支障があるというだけじゃなく、たぶん日常生活に支障があるレベル。




もう5〜6年前でしょうか、雑誌『ar』から依頼がありました。乃木坂46の堀未央奈さんに、合気道を教えるという2号分の企画です。

その時の経緯や内容は、こちらに書いていますので、興味のある方はどうぞ。



上の画像は、最初の号「基本の型を覚える編」の校正刷りの戻しですが、次の号の「実践編」とあわせて実質2時間程度です。

「基本の型を覚える編」は、正座法・礼法、構え、臂力の養成(一)、体の変更(一)、前倒受け身、後方受け身。構え、臂力の養成(一)、体の変更(一)では剣を使ってやってもらっています。


このときの様子を、引用すると

当日、初めてお会いして「わぁ細いなぁ華奢だな」と思うと同時に、できるかなと心配になりました。ところがまったくの杞憂でした。
正座法、剣を持った構え、基本動作と、何の問題もなく進みます。こういう風に持って、このあたりを狙って、前膝をゆるめて進みますとか、基準になることを見せながら言葉で説明するだけでできてしまうのです。驚きました。

と書いています。

剣の構えのところをもう少し詳しく書くと、ここに仮想敵がいる。剣からレーザービームが出ていて、その敵の目に当たっている感じでと説明しました。そんなことを言うだけで出来てしまうのです。

いままでの経験でも、初めて剣を持ってそんなことが出来た人は、堀さん以外には皆無です。


何が言いたいかというと、堀未央奈さんは身体の地図、そして身体を中心とした空間的な地図もできているのです。もちろん「剣を持つのが重い」なんてこともないです。

前倒受け身をすれば背面がまっすぐになるし、後方受け身ではお尻が上がります。つまりは体幹の筋肉はちゃんとある。だから時間をかけなくても、さっと出来てしまいます。



アイドルのレッスン以外に何かされているかどうかは分かりません。

まずは身体の各部がどこにあるか、どこを向いているかを感じられる。

さらには間合いなど、相手との空間的な関係を把握できる。

それらを感じた通りの動きができる筋力や神経系の働き。

そういう能力が、堀未央奈さんには備わっていたのです。



これらが、私が思う標準点です。

ここがクリアできたからアイドルができるかどうかというと、なんとも分かりませんが、たぶん芸のベースになるでしょう。合気道でも、ここがベースです。

いやいや本当は、これらが人間が生活していく上で、必要不可欠な身体周辺の能力だと思っているのです。



えっ、なんの話? スマホがあれば生きていけるよ。という方もいらっしゃるでしょう。

まあ、そうでしょう。

確かに生きていける。Amazonがあれば買い物に出かけなくたっていいし、ウーバーがあれば食事を作らなくたっていいし出かけることも不要。

お金を稼ぐための仕事だって、オフィスワーカーの多くがモニター越しの作業で、目と指しか使っていない時間が圧倒的。暇つぶしだってスマホだし、なんだったら脳もそんなに使わない生活なのかも。


だけどそれって生物として、進化なんでしょうか。退化なんでしょうか。




朝ハードなトレーニングをしても帳消しになる?


私は、以前にも書きましたがコロナ禍で外出自粛が求められたときに、これは危険だと毎日運動をするようになりました。


その文章の後半には、植芝盛平先生、塩田剛三先生、佐川幸義先生がどう考えられていたか、書籍から引用しています。



じゃあ若ければ大丈夫か。10代20代なら十分な運動量があるかといえば、そこはかなり怪しい。

10代の骨折率は、独立行政法人日本スポーツ振興センターの1970年から2017年までの統計では右肩上がりで、2006年あたりからは横ばいになっています。

部活動中の骨折が多いことから、オーバーユースの可能性が指摘されています。その一方で、子どもにロコモシンドロームが起きている可能性も言われています。子どもの老化が、起こっているのではないかと。少なくとも2020年以降の数字はありませんが、コロナ禍に子どもの骨折を調べても、激減していそうだと容易に推測できます。




もう世代を問わず、生きていく上での肉体的なベースが衰えていそうです。

なぜかといえば、日本人は世界最長の「座りすぎ」だから。2019年のスポーツ庁のWebマガジンにも、こんな記事があるぐらいです。


座りすぎの害は、かなり以前から言われています。

いやいや私は出社前にジムに行って激しいトレーニングをしているから大丈夫だと思っている方もいるでしょう。



今年出版された『脳と身体を最適化する』という本には、「ジムでの激しいトレーニングも、その後一日中座り続ければ、実質的に帳消しになる」と書かれています。

引用すると

座ることは骨格筋や脂肪組織にも代謝的影響を及ぼす。筋肉がエネルギーを使わないため、身体は脂肪を分解して筋肉が使うエネルギーをつくるのをやめてしまう。

そして座りっぱなしでいることは、心肺持久力が低い人は、BMIが高いことよりも、心肺フィットネスの低さが原因で死ぬことが多いと書いています。




人間は一日中中強度の身体活動をするよう遺伝子的にデザインされている


この説が妥当なら、オフィスワーカーの多くは、週に1、2回合気道を稽古したからって、座り続けている害の方がとんでもなく大きいのです。



もちろん職種によって大きな違いがあるはずです。

保育園の先生は、子供を抱っこして寝させるなんてことは毎日頻繁にやっていると言っていました。それは軽めのブルガリアンバッグで、頻繁に全身のトレーニングをしているようなものです。介護職なども、近いものがあるはずです。

だからエッセンシャルワーカーは、仕事以外に運動するなんてことは、たぶん不要。でもそれ以外の人たちは、身体も脳も危険なぐらいかもしれません。意識的に運動しなければ圧倒的に活動量不足。身体的な負債が、積み上がっているかもしれません。



致命的なのは、コロナ禍を経験したこと。1年でもあまり出歩かない環境を経験すれば、とんでもなく身体は衰えているはずです。新型コロナが五類になってからも、毎日ではないものの、リモート環境で仕事している人も少なくありません。渋谷合気道会の場合はそうです。


ニッセイ基礎研究所の調査では、2023年4月最終週の都心五区のオフィス出社率は70.8%。それ以外の東京は80.2%だそうです。

都心で働く人ほど、出社していない。渋谷合気道会の会員は、ほとんどがここに該当します。通勤したとしても、そもそも通勤時間が短い。



さらにはコロナ禍を経験したこと。雑誌Tarzanが2020年に出していた記事 「放っておいたら落ちる一方。4つの項目で“貯筋”残高をチェック」 には、興味深いことが書いてあります。

宇宙では1日で1年分、寝たきりでは2日で1年分の筋肉が失われるのだそうです。


「コロナ禍で2年間、ぐだぐだゴロゴロの自粛生活をしていたら、何年分の筋肉が失われただろう」というフレーズが出てきます。寝たきり状態ではないにせよ、本当にそうです。


だとすれば、コロナ禍の減少を取り戻すだけでも大変です。

もしかすると、骨折をして2、3年入院していたのと変わらないかもしれないです。




生物学者で、青山学院大教授・ロックフェラー大客員教授の福岡伸一さんは著書『新版 動的平衡3』の中で、こんなことを書かれています。


腸内細菌のような微生物は、単純な資材(たとえば炭水化物など糖類とアンモニア)から、すべてのアミノ酸を自前で作り出す万能の合成能力を持っている。人間はこれらの資材が揃っていても、必須アミノ酸を作り出せない。どうしてこんなに重要な能力を進化の過程で失ってしまったのかと。


そのことに関して、小さな字でサワリだけということで

あえて外部に必須アミノ酸を求めなければならないという課題を持つことで、積極的に動くことを強いられた生物が、“動物”へと進化することになった。

という恐るべき進化の考察を、小声で述べられています。

これが妥当なら、動かなくなった人類は、動物ですらない存在へと変貌しつつあるのかもしれません。

まるで情報をかき集めて編集・再構成するだけの、AIのような存在?





12月30日には親戚があつまって餅つきを


唐突ですが、餅つきの話です。うちの親戚たちは、もう10年以上前にやらなくなっていますが、何十年もの間、毎年年末の30日に集まって、餅つきをしていました。

多い時には30人以上も集まっています。私が見ても、あれって誰よ?と分からない人もいました。


それほど田舎ではないので、近隣でも、うちの親戚以外ではどこもそんなことをしていません。

私も子どもの頃から参加させられていました。男の子は、杵を持って餅をつくのです。儀式みたいなものですが、小さいときは杵を持ち上げるのも大変ですし、腰が定まりません。



バシンパンバシンパンとリズミカルに餅をつくおじさんたちは、オトナの男っぽかったです。

私だけじゃなく、そんな従兄弟たちも、いつしかサマになる動きになってきます。でもそれは筋力でやっているので、リズミカルに早いテンポでは長くつけません。

おじさんたちのそれとは、違います。


何が違うのかと言えば、まずは全身を使えているかどうかです。

私はのちに合気道をやるようになって、あれって杖の打ちと剣の振りのミックスだよなと思うようになりました。


おじさんたちは、そんなことしなくても筋力はあるし、全身を使えていたんです。

農家ではありませんが、どこの家も小さな畑があったり、釣りに行ったり、山へ山菜を採りに行ったりして、素朴な道具を使うことが当たり前になっていたんです。



歩く距離だって、今とは較べものになりません。日常的な遊びだって、空き地で野球だったり。整地されたグラウンドじゃないので、走塁するのだって負荷がぜんぜん違うのだと思います。

トイレは和式。家事だって、便利な家電はほぼありません。家事労働の負荷だって、現在からはかけ離れています。


何が言いたいかというと、あえて身体を鍛えようとか考えなくても、かつては多くの人が日常生活で鍛えられていたのです。素朴な道具を使うことで、全身をまとめて使うことが当たり前になっていたのだと思います。


ところが世代を追うごとに、負荷は軽くなり、身体が介在しなくても仕事も遊びもできてしまうデジタルの時代になってしまいました。iPhoneが登場したのは、2007年です。


なので身体を鍛えようとすれば、日常的な活動以外の、非日常的な方法を行うことになります。

日常的な身体の負荷がどんどん減っているなら、なんらかの意図的な鍛え方が必要なのは当然かもしれません。



ちなみに植芝盛平先生は29歳のとき、明治45年に開拓移民団を率いて北海道に入植されています。

そして59歳、昭和17年に岩間に移住。住居周辺を開墾し、道場や合気神社も建設され「武農一如」の生活を送られています。このどちらでも、開祖の怪力エピソードがいくつもあります。


現代のような便利な耕作機械があるわけもないですから、生活そのものがとんでもない鍛え方になっていたことは想像できます。

それは、いわば仕事である動作の負荷が高いと言えるとも思います。短時間で終わるわけではないでしょうから、力んでいたら疲れ過ぎて続けられません。一部の筋肉だけ使っていたら、負荷が集中して壊れてしまうかもしれません。




ウエイトトレーニングと呼吸力の関係


筋肉だけではありませんが、ここではとりあえず分かりやすく筋肉で話を進めます。


最初に書きましたが、ある30代の初心者から聞かれました。「身体を大きくしたいんですが、武道的には良くないですか?」と。

う〜ん、筋肥大とかボディメイクとか考えたことがないので分からないけど、運動しないよりはいいんじゃない。でも「あなたはなんかウエイト使ってやってるでしょう?」と聞きました。


やっているということなので、どういうのを?とさらに突っ込んで尋ねると、ダンベル持ってアームカールをやっていたそうです。「ああ〜、それは最悪かも(笑)」

単関節運動は、狙った筋肉に集中的に負荷をかけられるので、ボディメイクするにはタイパがいい。でも筋肉の連動性がない。ウエイトやマシンでトレーニングしている人は、こちらが技を掛けて崩れると、その崩れ方が変。たぶん全身に力を分散させて逃げるのではなく、一部の筋肉だけをすごく力ませて耐えようとするのだと思います。だからすぐに分かる。



そういう人が仕手になった場合は、一部の筋肉を力ませて技を掛けようとするから、相手は痛いし力の対抗になる。合気道でいうところの呼吸力にはならない。

呼吸力はそれだけじゃないけど、キネティックチェーン(運動連鎖)は必要不可欠。単関節運動では運動連鎖が起こりにくく、合気道をやる上ではマイナスだと思います。


キネティックチェーンで検索すると、ウエイトトレーニングなどでも使われています。

スポーツを行うとき、ある一部分だけを動かすよりも、さまざまな筋肉や関節などを動かしながら複雑な動作を行うことが圧倒的に多くあります。例えば野球の投球動作であれば地面を使って得られた力を「足→体幹→腕→指」へと伝達し、最終的にボールに力を加えながらリリースすることでより速いボールを投げることができます。このようにさまざまな筋肉や関節などが連動して働くことを「キネティックチェーン(運動連鎖)」と呼びます。

とありますが、紹介されている運動は「足→体幹→腕→指」ではなく、上半身なら上半身だけが連動しているトレーニングになっているようです。

少なくとも私は、呼吸力とは全身の連動が必要だと思っています。

それと、もうひとつ。ウエイトを使うと、力んで動かすことが当たり前になっているのではないでしょうか。



いや、自体重トレーニングでも、そこは同じマイナス面がある。力んでやっていたら、その場所で呼吸力は流れなくなってします。

キネティックチェーンの定義がどうあれ、“野球の投球動作であれば地面を使って得られた力を「足→体幹→腕→指」へと伝達し”で説明すると、肩に力が入ると肩が上がり、足裏から伝達され増幅された力は、肩で大きなマイナスに見舞われると思います。



筋トレをしている人のすべてが、動作がおかしいわけじゃありません。

でも動作のおかしい人に聞くと、みんな筋トレをしています。

私の経験上ではそうですし、さらにいうと身体の地図がむちゃくちゃです。今、右手の人差し指がどっちを向いているか、みたいなことがわからない人がほとんどです。

筋トレはしていないけれども、力み体質の人もいます。



力んでいると、たぶん重力の方向が分からなくなります。神経系を含めて、重力線を感じるセンサーに使うリソースが足りなくなるのかもしれません。すると、さらに姿勢を維持するためにあちこち力むんじゃないかと思います。

人間は重力の方向を基準に、自分の各パーツの位置を把握しているのだと思いますが、力むことが日常になると、それが無茶苦茶になるのかもしれません。測量するにも、上下がないし、東西南北もない。


それは、合気道だけの話じゃないんです。




スポーツは究極のチーティング動作


YouTubeで東京大学名誉教授の小林寛道先生が監修された、運動能力の高め方というチャンネルがあります。そこに、同じ東大名誉教授の石井直方先生が登場されています。石井直方先生は、学生時代に関東や全日本のパワーリフティング選手権を連覇され、ボディビルの全日本でも優勝され、筋肉博士と呼ばれるそうです。

その石井先生が「より重い重量を持ち上げるにはどうすればいいか」という質問に答えられています。

そこで語られているのが、チーティング動作。「スポーツ・日常の動作では、特定の筋肉だけを使う場面はない」と。そして「スポーツは究極のチーティング動作」だとおっしゃられています。


それはそうだよね、なんですが。合気道にかかわらず、スポーツは全身運動。筋トレの世界ではズルとされる方法が、逆にスポーツには不可欠、ということでしょうか。



ちなみにこのチャンネルを監修されている小林寛道先生は、東京大学の授業で合気道を教えられていた方のようです。運動部の合気道部は至誠館ですが、そうではなく合気会かと思います。

また他の動画で小林寛道先生は、1.筋トレ 2.有酸素運動 3.QOL(クオリティ オブ モーション)を提唱されていたり、「体幹深層筋群と脳は直結している」など注目すべき発言をされているので、見ておくべき貴重なチャンネルです。





私がやっている方法は効率が悪い


HIITで痛めた有段者は、ダンベルを持って行ったそうです。効率を上げようと。最大心拍数の85~90%にしようとすれば、かなり重いものを持って負荷をかけようとする人は多いと思います。

慣れてしまった負荷だと、筋肉量を増やせない。どんどん負荷を増やしていく必要があるそうです。身体をデカくしたいなら必要かもしれませんが、少なくとも合気道には不必要。



私はもう最大心拍数に近づけようとしないし、自重でしかやらない。いや背面だけは、チューブを使いますが。でもウエイトを持って激しい運動するなんて、年齢的にも絶対にやっちゃダメだよと言いました。年齢的とは、あくまでも感覚で言っているだけですが、もちろん個人差が大きい。

どんなジャンルでも、効率を上げようとすれば必ずマイナス面が出てきます。そのマイナスが怪我になると、取り返しがつきません。



ところがいくらHIITでも日常的にやっていると、同じことをやっていればそのうち慣れてしまいます。慣れてくると、心拍数がそれほど上がらない。

私の場合は、どんどん速度を上げたり負荷を増やしたりするのは危険だなと思ったのです。

さすがに無茶するのはやめようと思ったのです。


自宅で短時間で心拍数を上げられる、どんどんスピードを上げられる運動は、あまり多くありません。

そうすると長い時間をかけて、回数を多くやるしかないのです。

しかしこれにも問題が。私は今、例えば腕立て伏せをするなら、足を低いイスの上に乗せて、手をつく位置を変えながら200回程度やります。半分以上は拳立てです。回数ありきじゃなくて、けっこうキツくなってきた。息が上がってきたと思えば止めます。


同じ手の位置でやるのは、だいたい20回程度。もちろん、効かせる場所を変えるというのもありますし、同じ位置で100回もやっていたら手首や肘を壊しそうです。

負荷をどんどん増やさなくても、回数を増やしていけば、それも危険です。


拳立てにするのは拳を鍛えているんじゃなくて、手首を守っているのと、ワザと不安定さを作っているのです。意図は後述しますが、どこかの筋肉だけを鍛えようとしているんじゃなくて、少しずつゆらぐ負荷に対して、ある程度チーティングになるように対応したいと思っているのです。


矛盾しているようですが、鍛えるのとチーティングを両立させたい。つまり運動連鎖をできるだけ損なわないようにしたい。


やりたいのは筋肥大でもボディメイクでもなく、『ニューバランスのFresh Formで1万歩歩くとどうなるか』に書いたように俊敏性の維持。そして50歳ぐらいのときの身体能力を維持したいということです。




難しければEMSから始めるという手も


とはいえ運動不足の人、あるいはどこかに痛みのある人なら、それが自重であっても大きな負荷をかけるトレーニングは危険です。



それじゃあ、どれだけ運動すればいいのか?」に書いていますので、詳しく言及しませんが、30代の会員です。ずっと座って仕事しているのです。たぶんそのことが原因の腰痛があり、スタティックなプランクでも痛くて続けられないと言います。


それならEMSしかないねと、私が勧めました。勧めたときには、とにかく高いやつをとしか言っていなかったのですが、SIXPADのCore Beltを購入したそうです。

私はEMSを使ったことがありませんが、奥さんが腰痛持ちで、20年以上さまざまなものを試しています。スポーツした後だけではなく、日常的に使っています。ほぐすと鍛えるを両方やるためです。

ところがこれがいいと思って使っていても、機種がモデルチェンジすると、効きが悪くなったりしたそうです。それがSIXPADを購入してからは、断然いいと言っています。


Core Beltは、ぐるっと腹回りに効くタイプなので、少なくとも腹側だけに効くタイプより腰痛持ちにはいいはずです。SIXPADは高いですが、ジェルシートが不要で水で使えるタイプであれば、ランニングコストは安いはずだと思います。




最低限、体幹を鍛えておくことは必要です。

運動どうのこうの以前に、日常生活に支障をきたします。少なくとも腰痛であれば、EMSでほぐすと鍛えるの両方ができるので、それも手だと思います。


筋トレの持つ危険性がないのですから、むしろEMSを推奨すべきかもしれません。

というか故障がなくても弱りきった身体なら、EMSから始めるのが現実的な気がします。




SIXPADのPowersuit Core Beltは、腹直筋、腹斜筋、広背筋(下部)、脊柱起立筋(下部)が鍛えられるとあります。腸腰筋には届かないのねとは思うものの、とりあえず体幹に筋肉のない人なら、十分過ぎるほどだと思います。

歩いてもいないなら、Powersuit Hip&Legだって使った方がいいかもしれません。


ただ「EMSだけで筋肉量が増加した」という調査はないそうです。また筋肉は脳からの刺激で動くもの。それを強制的に動かすことへの懸念も指摘されています。

なので、EMSはリハビリ的な使い方だけをして、痛みがなくなってくれば、EMSを使わないトレーニングに切り替えるのが必要かもしれません。





少ない回数で安全に行えるスロートレーニング


あんまり筋トレしたことがないという人には、スロートレーニングから始めるのがいいと思います。実は素早い動きでおこなう筋トレは、筋肥大につながりにくいという説があります。

反対にスロートレーニングは、結果として負荷のかかっている時間が長く、それが筋肥大につながるというのです。


確かに素早くないので、ケガにはつながりにくそうです。



ここまで長々と読んでいただいた奇特な方ならお分かりだと思いますが、私はスロートレーニングしていません(笑)

スロートレーニングのメリットはよく理解できますが、筋肥大させたいと思っていませんし、筋トレにゆらぎを求めるぐらいですから、遅いスピードには耐えられるけど、素早さには対応できない、みたいなことは避けたいのです。


じゃあどうしてるのかといえば、様々なスピードで行っています。

YouTubeで「自宅でできる筋トレ」を発信されている鈴木達也さんが提唱されているBPMトレーニングです。



BPMトレーニングとは、曲のテンポに合わせて行う方法のようですが、とりあえずは音楽は関係なく、動作のスピードを変えています。


どんなものか、とりあえずやってみてください。ノーマルなランジやスクワットより、はるかにキツイと思います。

スロートレーニングのように4秒かけて下ろして4秒かけて上がるところもあれば、ノーマルな速度のところもあり、変則的な時間の掛け方をされています。どこの部位でも、このBPMトレーニングを出されていますが、私は効果的に鍛えられると思っています。


だけど速度は変則的でも、同じルートでの上げ下げなので、私はこの方法ばかりやったりはしません。

さまざまな部位で、このBPMトレーニングを取り入れていますが、あくまでも基礎的な身体作り。ランジやスクワットなら、クロスランジやブルガリアンスクワットも行います。


それに、したいのは筋トレではありません。




瞬発力を鍛えるトレーニング


上の動画では、下半身全体を鍛えられると思いますが、鍛えているのは筋肉です。

私が鍛えたいのは動きです。

ここから先は、そこそこ鍛えている人にしかお勧めしませんが、さまざまな動きの中で鍛えたいのです。


私はこの動画を参考にしています。

筑波大学スポーツ【公式】というチャンネルで、学生アスリートのためのジャンプアップ編です。



これ学生アスリートのためのトレーニング方法ですから、私がやっているから大丈夫だろうと考えてやると、けっこう危険かもです。




広義のファンクショナルトレーニング


そもそもファンクショナルトレーニングは、競技でその人のポジションの動きや技術を習得するためのものだと思います。

それが最近はどうももっと基礎的な、汎用的に動きの基礎や連動性・協調性を高めたり、あるいは軸取得のための方法など、守備範囲が広くなってきているようです。


養神館の場合だと、構えから臂力の養成、体の変更、終末動作、そして斜行なのが合気道のファンクショナルトレーニングだと言えると思います。

そのカタチをしっかりやれば、動きの核はできると思います。ただそれを繰り返せば、キネティックチェーンはどうか。定型ではない動きに対応できるか。動きの質が高まるかと問われると、なんとも分かりません。



全身の連動性を高める方法としては、アニマルムーブが代表的です。

アニマルムーブの中でも、もっともポピュラーなのがアニマルウォークだと思います。

先にあげた小林寛道先生監修の「運動能力の高め方」というチャンネルで、この段階別のアニマルウォークが紹介されています。


とりあえず見てみてください。



確かに上半身と下半身の連動性は高まるし、右側左側、そしてクロスしての動きは、神経系の働きとしても重要かと思います。

そして筋トレでもある。


私があんまり区別していないというのは、こういうことです。

運動不足は困る。だからといって筋トレに特化するのもなぁと思っているのです。




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