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膝の作用と壊さない使い方



【つま先と膝の方向が一致すること】


先日、体験に来てくれた女性に構えを説明していたら、その人の前足の膝がつま先の方向と一致しないので、あわてて「つま先と膝の方向が一致しないと、膝を壊すから絶対にダメです」と説明しました。


けっこうフィットネスをやられている人なのですが、それは聞いたことがないとおっしゃっていました。


見た瞬間に、ゾッとしまた。

というのも、私には苦い経験があります。精晟会渋谷に入会してくれた若くて動きも早く、熱心だった人が、斜行や残心のときに、膝がつま先より内側に向くのです。


絶対ダメだと何度も注意していたのですが、2ケ月もたたないうちに膝を壊して稽古に行けない。整形外科に行ったら、ここまま行けば手術しかないと言われたそうで、退会されてしまいました。

その人は、ジムでパーソナルトレーナーについて運動していたそうです。故障は合気道の稽古が原因ではなく、そこでの運動が原因なんだそうです。



どうもフィットネス業界では、膝とつま先の方向を揃えることを、あまり言わないのかもしれません。

いや武道の世界でも言わないかもしれませんが、私はかなり言います。


YouTube見ながら運動をしているとき、自重トレのランジやスクワット、ヨガだって大腰筋を伸ばす、膝を前にせり出すポーズがあります。トレーナーの人が「膝がつま先より前に出ないように」と言うことはありますが、「方向が一致するように」との説明は聞いたことがありませんし、テロップも見たことがありません。


もしかすると何も説明しなくても、膝をせり出すときに、つま先と一致しない人自体が少ないのかもしれません。

不思議で、以前いろいろと調べてみました。

するとO脚やX脚のまま運動すると、膝を壊しやすいという話はけっこうあります。それから筋力不足、特にお尻の筋肉がないと、膝を痛めやすいという注意も出てきます。


ただここに書いた人たちは、普通以上に運動をしているのです。筋力だって、人並み以上にあると思います。





【養神館合気道は股関節の外旋】


O脚やX脚なら、確かにそのまま運動すると危険かもしれません。「膝がつま先より前に出ないように」していれば、向きが一致しなくなることは、とても少ないのかもしれません。


合気道を稽古するなら、O脚やX脚であってもゆっくり動作していれば、それほどの危険性はなく、矯正されていくかもしれません。少なくとも養神館の重心移動は、腰を落とした大きな動作ですから、下半身の筋力はつくはずです。

とはいえ、私にはO脚やX脚のまま運動して大丈夫なのかどうか、なんとも分かりません

理学療法士や整体の人に相談してもらうのが良さそうです。



ただ一つ言えるのは、養神館の立ち方、動き方の基本は撞木足。撞木とは両足が丁字形に開いていること。剣道や杖道は違いますが、昔の剣術はたいがい撞木足だと言われています。


前足は正面に対し、少し外を向きます。


後ろ足は大きく外を向きます。前足と後ろ足の向きは、ほぼ90度になっています。

画像で足指を上げているのは、進むときに親指を外すとか、後ろ足の足裏でも重心移動したり、親指で噛むことですから、ここでは無視してください。


骨格的な説明だと、股関節の外旋になるかと思います。

股関節が外旋していると、股関節周辺がゆるみやすく、膝をゆるめても、つま先の方向と一致しやすいと思います。私の体感なので、汎用性のある考え方かどうなのかは分かりません。



あくまで私はそうしているということなのですが、外出自粛やテレワークで、家で運動をする人が増えてきました。

私も以前に書いている通り、自宅では主にYouTubeを見ながら運動しています。

HIITの動画では高速スクワットがよく出てきますが、そんなとき、私は勝手に相撲スクワットに変えて行っています。


スクワットは、腰幅や肩幅ぐらいで、つま先が前方を向いた平行立ちが多いと思います。でもこの姿勢で、高速スクワットを行うと、曲げたときに膝の向きが一定になりにくいのです。


ところが相撲スクワット、つまり四股立ちの広いスタンスで、股関節の外旋を維持することだけ意識していれば、どれだけ高速で行っても、膝の方向はほぼ定まっています。

もちろん広いスタンスなので、通常のスクワットより負荷は大きいはずですが。

何度もお断りしておきますが、あくまで私の体感です。私の身体のクセが、そうなる理由かもしれません。



稽古のときには、私の体感ではそうなるけれども、家で運動するなら、とにかく膝とつま先の向きの一致を意識してくれとと言っています。

それから中年以上の人たちには、運動後に膝裏をゆるめることをしてくれと、やり方を説明しています。加齢によって膝を痛めやすくなるのは、また別の話だと思います。





【膝を抜くの問題点】


甲野善紀先生が提唱された「膝の抜き」。

もちろんそれまでにも名称がないだけで、いくらでもあったと思いますが、甲野先生が明確に説明され提示されたことで、武道だけではなく、さまざまなスポーツの世界でも広がりました。



私たちは立っているとき、無意識にそれなりに力を入れて関節を固めています。膝の抜きは、膝関節を固めている筋肉を一気に脱力するとこです。 

一気に脱力すれば、胴体は落下します。胴体や頭の重さを位置エネルギーとして使えるので、大きな運動量が発生するはずです。その落下するエネルギーを真下に潰すのに使ったり、前方への力として使います。


また抜くだけなので、気配が出にくく、動き出しを察知されにくいのです。落下しているあいだは、地面との摩擦がゼロに近い、つまり浮いているのと同じなので、さっと身体の方向を変えることができます。


そんな風にメリットがいっぱいあるのですが、あまりにも「膝の抜き」が広まってしまったので、なんでも「膝の抜き」だけの説明で再現されることが定着してしまった感があります。



たとえばバスケットボールやサッカーの横への動きも、膝を抜きで説明されていることを見かけます。

しかし「膝の抜きだけ」を使って、気配なく横に走り出すことができるでしょうか? 


つま先はほぼ前方を向いているのですから、たとえば右脚の「膝の抜きだけ」なら、右方向に倒れはするけれども、つま先は前に向いたままです。足が前に向いたまま着地して右に走り出すなら、膝を壊しかねません。


なので説明されている方も、たぶん膝だけを抜いているのではなく、股関節も抜き、落下しながら右に外旋させているのではないでしょうか。要するに胴体や頭の重みを使い、気配なく右側に素早く動くなら、右足全体を抜くことが必要なのだと思います。



プロのアスリートはともかく、一般的な人たちに「膝の抜きだけ」を説明していると、過剰に言葉にとらわれて危ないことになりかねないかもしれません。





【養神館で重視するのは膝のせり出し】


多くの武道で、膝は前に出さない。足裏から膝までは垂直になっています。

空手でも多くの流派は、前屈立ちになったとき、垂直に保ことが要求されています。それは膝を壊さないためかと思いきや、上半身を垂直にするためだそうです。

膝が理由じゃなければ、前足に、偏って体重を乗せないためかと思います。


ところがオリンピック競技になった全空連の組手試合の突きでは、飛び込んでの前傾姿勢が圧倒的に多いようです。膝も、せり出しています。高速化が進んだ、ここ10数年ぐらいの変化でしょうか。

前傾すればリーチが伸びるのは分かりますが、そうすると前足にかなりの体重が乗ってしまいます。



私見ですが、膝がせり出すかどうかで、武道を大別することができると思います。足遣いが違えば、技術体系が根本的に変わるはず。ひとりの身体の中で、ミックスするのも難しいはずです。



ともあれ、養神館では膝を前に出します。

かなり重視しています。


私が私見をどうこう書くより、まず塩田剛三先生の著書『合気道修行』から引用します。


右なら右足から踏みこんだときに、体全体の重心がそれに乗るかどうかということです。乗ったら効くのです。
合気道では体全体の一致した瞬発力で前に出ることが重要です。しかし、大抵の人は、踏みこんだときに膝の操作がうまくいかなくて、せっかく重心の移動によって生じた力がそこで止まってしまい、上半身(拳)にまで伝わりません。だから突きも効かないのです。
ポイントは膝の柔軟性です。柔軟性といっても、関節がフニャフニャしていることではなく、踏みこんだときに膝がなめらかに前にせり出し重心をそのまま前へ伝えることができるかどうかなのです。これができると、体全体の力が拳に乗って、大きな威力を生み出すことができます。これが集中力です。そのとき当然、前の膝のせり出しと腰の前進にともなって後足が引きつけられる形となります。
道場で稽古されてる方ならおわかりだと思いますが、この動きは、毎日稽古の前に行う臂力の養成と同じであり、また投げ技において前に出る力を手に伝えたり、逆技を体の前進によって効かせたりする動きと共通しています。つまり、合気道の最も基本的な体の前進動作は、そのまま突きの動きとして応用できるというわけです。もちろん実際には、より大きく、より早い動きの中で、この動作を行えなければならないことは言うまでもありません。



板垣恵介さんの挿絵でも、前足も後ろ足も外を向いていますし、前膝はせり出しています。

膝のせり出しは、膝を緩めること。

膝の抜きによって、一気に落下するのとは少し違います。

そして重心の移動によって生じた力を最大限に活かし、かつ自分が崩れないためには、股関節の外旋と股関節に乗ること。私見ですが、それが養神館の動きには必須なのです。



関連した動画をつくりました。よろしければ、ご覧ください。






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