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年末年始に読むのにちょうどいい『室伏式 世界最高の疲労回復』


室伏式 世界最高の疲労回復

【タイトルに偽りあり】

このタイトル、デザインを見て、ああまた流行のあざといテンプレートに乗っけた本だなと思った。そう思うと、いつもなら手にも取らないけれども、室伏広治さんだし、こんな強靭な人が何を書いているんだろうという興味で立ち読みしてみました。

室伏さんのような超人が、疲労回復のメソッドを出したからといって、一般人に当てはまるわけないじゃないか。それに私自身、そんなに身体も心も疲れない。疲れるんだけどダメージが少ないし、ケアする方法もそれなりに知っているし、何もしなくてもだいたい回復してしまう。だからそれほど、疲労回復に興味はないんです。

「はじめに」を読むと、30歳の私の身体は悲鳴をあげていた。思い切って2005年シーズンを休養にあてることにしたとあります。そして、「休むことで発見できた、新たな方向性」という小見出しがあります。以下、書籍から引用

 

これまでに金メダルを獲得したセオリーにとらわれず

純粋に自分の身体の中に

どのような可能性があるのか、

身体が何を求めているのか、

自分自身で身体に問うこと

自分の身体の中で眠っている感覚に気づき、

呼び起こすことができれば、

新たな神経回路が生まれ、

それにともなって筋肉のつき方も変わる

 

これって身体に貞くことだわ。野口三千三先生の「からだに貞く」の系譜なのかもしれないし、そうじゃなかったとしても、競技に特化したした身体づくりじゃないところに、競技者、しかもオリンピックの金メダリスト自身が目を向けるなんて、僭越ながらすごい勇気だなと思った。

なぜかって、それは今までの自分の身体・動きを壊すことになりかねないから。

そして、「狭いスポーツの世界から抜け出した考えを持たなければならない」とあり、こんなことをされたそうです。

さらに引用。

 

ハンマーだけではなく、

投網、紙飛行機、手裏剣、

撒き菱、団扇、重錘、

投げられるものはすべて投げてみよう…と試み、

投げることの奥深さを知り、

これまで使わなかった感覚や筋肉を磨く

 

もう「はじめに」の文章をぜんぶ引用したいぐらいです。私は「はじめに」をちょっと立ち読みしただけで、これは買わなきゃと、すぐレジに向いました。

17歳で日本陸上競技選手権に出場し、なんと20連覇。41歳まで現役を続けてきたスーパーアスリートが、そんなことします? 

「ハンマーを投げる」カテゴリーから「投げる」という一段上のレイヤー行くのは、回り道でしょうし、もしかしたら休養にさえならないかもしれません。

室伏さんの休養は、のんびりバケーションに出かけたわけではなく、狭い競技の世界のセオリーや価値観から出て、ご自身の身体の可能性を探る攻め。

つまりこの本は、「世界最高の疲労回復方法」ではなく、疲れない心と身体になるための積極的な方法論、ヒントが書かれているのです。

帯にある「誰でもできて、すぐ変わる!」は、ほぼウソです(笑) 

確かに、たった指一本でも全身を使う実感を得るやり方が書かれていますが、これ、普通の人ではまず実感を得られません。すぐに実感があるなら、それは合気道でいうところの呼吸力のある人だったり、中国武術でいうところの纏絲勁などを使うことができる人ではないかと思います。

かといって、難解かというとそんなことはありません。

年末年始に読むのにちょうどいいと思ったのは、とても平易に書かれていること。そして何より、休みのときにリラックスして、振り返りながら読むのに適していると思ったのです。

【エビデンスのある知見】

目次を書いておくと、以下の通りです。

第1章 「疲れ」の正体を知る 第2章 「新聞紙エクササイズ」7つのメリット 第3章 限界を定めず可能性を高める 第4章 筋肉が疲れから身体を守る 第5章 疲れない食べ方・眠り方 第6章 支えるための「体幹ボックス」を知る 第7章 疲れない精神(こころ)を養う

何も武道をしていなくても、快適に生きていけるよう、動ける身体であるために知っておいた方がいい知識は、それなりのエビデンスとともに書かれています。

この本には出てきませんが、近年、さまざまな身体運動や健康などに関して、従来の通説を覆すような研究成果が数多く出ています。たとえば、運動前のストレッチに怪我の予防効果はなく、むしろパフォーマンスを低下させるという説。いまだ細かな議論のあるところで、客観的な判断がつきません私自身はウォーミングアップは必要、ストレッチは不要だと思っていますが、稽古に際にそういう指導をしてしまっていいかどうかは悩むところです。それでストレッチ的な役割りもカバーできるようなウォーミングアップをしていますが…

だからこそ室伏さんのような桁外れの実績を持っていて、なおかつ体育学の教授である人が、どう考えられるのか、とても知りたいところです。

というのはネットメディアなどでは、心身に関する様々な専門家が、お手軽にこうだと書いたり動画を公開したりしますが、むしろ危ないだろと思うものもあります。Googleは、医療情報に関しては、検索結果からエビデンスのないものを排除して、権威のあるものを優先しています。でも医療ではない例えば筋トレやストレッチ、コンディショニング、肩こりや腰痛の解消みたいな方法は野放し状態であふれています。玉石混交です。

たぶん室伏さんは、本の趣旨に沿っていて、それなりのエビデンスがあり、なおかつご自身の身体を使った実験で確信されているものを書かれているのだと思います。

たとえば「同じ姿勢でいるのはNG。1時間に2分でも身体を動かすと寿命が延びる」「脳の影響として重要な役割りを担うBDNFは、継続的な運動によって増加される」などがあります。

このあたりのことを知ることができるだけでも、かなり貴重です。

第6章の「体幹ボックス」の話は当然だと思っていますが、根拠としてとても参考になります。

体幹といえば、バカみたいに腹筋背筋鍛えろみたいなことで終わってしまいがちですが、室伏さんは上下に横隔膜と骨盤底筋のあるボックス。しかも呼吸によって腹腔内圧を保ち、脊椎を安定させているとお書きになっています。

これって、このブログに書いた「丹田から出す力って、何だ!?」にあるスタンフォード大スポーツ医局が提唱するIAP呼吸法と同じことです。IAP呼吸法では、呼吸法のやり方しか書いてありません。

「丹田から出す力って、何だ!?」は、室伏広治さんのお父さんの話から始まっています。私にとっては、そこも、えっ!?と驚いたポイントです。

【赤ちゃんの身体の使い方を再び習得する】

IAP呼吸のことが書かれているのは、『スタンフォード式 疲れない体』という本です。

「丹田から出す力って、何だ!?」の繰り返しになりますが、IAP呼吸法のメソッドを開発したのは、チェコのパベル・コラー博士。

博士が提唱するDNS(動的神経筋安定化)という“筋肉より神経に着目した身体機能理論”の中で、人はみな、赤ん坊のときに「お腹の圧力を保ったまま呼吸」していたといいます。乳児期、腹圧呼吸をすることで体は徐々に安定しはじめ、首が据わり、寝返りが打てるようになります。そして、やがて赤ちゃんは立てるように。 これこそまさに「体の中心が安定し、スムーズに中枢神経と体の各部が連携する、万人に共通する最適で効率のいい体の使い方」とありました。

スタンフォード式疲れない体

書いてはあったのですが、疲れない身体のためのポイントは呼吸法で、そのIAP呼吸法のやり方で終わっています。

ところが『室伏式 世界最高の疲労回復』には、体幹を形成し、パベル・コラー博士の提唱する赤ちゃんの赤ちゃんの運動パターンに学ぶトレーニング方法が3つ掲載されているのです。

その3つとは、すべて反射を活かした動きを取り戻すトレーニングです。

って、武道やってる人なら興味あるでしょう?

室伏さんは直接パベル・コラー博士から、姿勢を安定させたり、人間本来が持っている正しい運動パターンを呼び起こす「内在筋に注目した筋肉の使い方」を教わったそうです。

ところが残念ながら、写真入りで解説されているにもかかわらず、3つ目のうつ伏せ(対角線上)の動きを学ぶには、「これはアスリート向けの上級編です。専門家の指導を仰がなければ正確な動作を行うことは難しいです」と書かれています。

いや、それが本当です。安易なこれをすればいいというハウツーは、たいがい個人差を無視していたり要訣を省いているとか、あるいは危険性を無視しているのです。

だから室伏さんの書き方は、逆に信用度が高いと思います。

3つ目のトレーニング、やってみましたが、私には要領がわからないところがありますので、やめておきます。

室伏式 世界最高の疲労回復


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