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一ヶ条抑えは痛くするもの? しないもの?


一ヶ条抑え

“抑え技”の本質は痛みを与えることじゃなく、文字通り抑えること?

正面打ち一ヶ条抑え(一)。

基本技の中でも基本になるので、初心者の多い精晟会渋谷では他の技をやる前などにも頻繁に稽古します。あるとき20代外国人男性とこの技を稽古していた20代男性が、最後の抑えのところで「膝が届きません」という。え、届かないの?

一ヶ条で受の右腕を抑えるなら、自分の左膝は受の右脇。右膝は自分の右手の親指につけて押し広げます。

股関節が硬いのかなと思って見てみると、腕が長いのです。この人は身長も高いけれども、手足が長い。比率が日本人とは、かなり違います。

こんなケースは今まで経験したことがありません。

でも精晟会渋谷では体格差やリーチ差がある場合にどうするか。崩すことが出来るか、効かせることが出来るかを重要視しています。なぜって、合気道が弱者のためのものなら、そこは避けて通れません。

届かないならしょうがない。どうするかと思って自分でやってみながら「抑えは何より動けなくして取り押さえることが重要だから、左膝は確実に脇に押し当てる」「手首は腕で広げるだけもいいです」と説明しました。

説明した後から、うーん、それでいいんだろうかと考えました。

抑え技と固め技はちがう?

養神館では一ヶ条抑え、二ヶ条抑えなどは「抑え技」と呼ばれるカテゴリーです。書籍でも固め技という言い方は、見かけたことがありません。確認のために調べていたら、NHK WORLDで放送されたSAMURAI SPIRIT「AIKIDO」でも、Basics of AikidoとしてOsae-waza Pinと表記されていました。Pinの正確な日本語訳はわかりませんが、ニュアンス的にそうか、Pinって感じだよなと勝手に思っています。

ところが養神館以外では、一教抑え、二教抑えなどは、ほぼ固め技とされていることが多いと思います。植芝吉祥丸先生の『合気道教範』では「投げ技」「固め技」「投げ固め技」という分類になっています。

ニュアンスの問題だけですが固め技と呼ぶことに、なんとなく私は違和感を感じています。

柔道で固め技はさらに「抑え込み技」「絞技」「関節技」に三分類され、袈裟固めなど、抑え込み技はガッチリ動けなくする印象です。送り襟絞め、腕拉ぎ十字固めなどの絞技関節技は、頸動脈を絞めて落としたり、骨を折られる恐怖でタップする印象です。

一ヶ条、二ヶ条、三ヶ条はガッチリでもないですし、そこまでの恐怖を感じたりはしません。あくまで私の個人的な印象ですが、取り押さえるという感じ。受が逃れようと、もがくと痛くなるものではないでしょうか。 いや、もちろん痛いですし、痛くすることをしますが、それは本質じゃないんじゃないかという気がしています。

やたらと痛いはずの二、三、四ヶ条が効かないのは

初心者にとっては、一ヶ条抑えの最後の抑えも痛いですし、二ヶ条、三ヶ条、四ヶ条は強烈に痛いものです。

しかし最初から、あまり痛くない人も存在します。二ヶ条で落とそうとしても、指が回らないぐらいに太い手首や大きくて分厚い手の平を持つ外国人。また四ヶ条でも痛みを感じないのは、空手などでバチバチ腕をぶつけあうような稽古をしている人などは、たぶん腕の痛覚が麻痺しているのです。というか、そういう鍛え方をしているのです。

そういう人たちにも、痛みを感じさせるように工夫した方がいいのでしょうか。

あくまで個人的な見解ですが、本来合気道は一ヶ条が基本。一ヶ条に持っていけなければ、二ヶ条。二ヶ条に落とせなければ三ヶ条。三ヶ条がダメなら四ヶ条という風に展開するものだと思っています。それで、最終的にうつ伏せに導けばいいと。四ヶ条でちっとも痛くない腕の痛覚が麻痺しているような人でも、大きな重心移動の力を使えば、痛がらせなくてもうつ伏せにさせることは可能だと思います。

稽古上は二ヶ条なら二ヶ条を効かせられるよう繰り返しますが、護身的には効かなければ居着いた瞬間に他のことをすればいいのです。

冗談みたいですが四ヶ条が効かない人には、皮膚をツネってあげれば、とたんに四ヶ条が効いて痛みを感じるものです。

たぶん痛覚が麻痺している/痛みに強いというだけではなく、リラックスして重心が下がっているから、そこを破れば効くのではと考えています。腕がごつくて、こちらからの重みの伝達を受け止めて、なおかつ余力がありすぎるからリラックスできる。自分の体を固めないで、受ける力を吸収できてしまうということかもしれません。ツネるのは冗談にしても、吸収させない・対応させない方法なら、いくらでも考えられます。

いやでも、私は合気道としては痛みを与えることが主眼になるよりも重みの伝達などによって、受を動かし、コントロールすることが大切だと思うのです。どれだけ痛くするスキルを取得したとしても、それが力づくなら、あまり意味がありません。

それに痛覚が麻痺しているような人じゃなくても、アドレナリンが噴出している万が一のような状況なら、この程度の痛みだと降参したりはしないのです。テンションが上がり過ぎで、まったく感じないかもしれません。

うつ伏せにしてからの抑えも、ついつい痛みを与える極めが主眼になりがちですが、これももしかすると本質じゃない。 最近は「肩に重みがかかって、簡単に動けない。動けないように抑えることを考えましょう」というように説明しています。

最初に書いている「抑えは何より動けなくして取り抑さえることが重要」というところですね。 その一ヶ条に戻って、もう少し説明します。

一ヶ条は他の技の基盤となる技?

一ヶ条の理合いは、とても重要。二ヶ条や三ヶ条四ヶ条でも出てくるし、手の形や向きは違えど肘当て呼吸投げや四方投げなどでも、部分部分で出てくる基礎になるものじゃないかと個人的には考えています。

一ヶ条じゃなくて、他の技が基礎でもいいんじゃない? と言われそうですが、そもそも合気道が剣の理合いなら、剣と剣で打ち合ったときに、どう先に入るか、止めるか、打ち勝つかが核心的なテーマになるはずです。

剣を抜こうとした手を抑えられたらどうするか、などは複次的でしょう。剣の斬りを紙一重で躱して入身するのは理論上は成立するけれども、真っ直ぐ斬ってくる・袈裟に斬ってくるなどの前提がなければ達人級の難易度です。

一ヶ条抑えは腕を伸ばした自分の制空権を護ること?

肩から掌まで、腕を伸ばした動きが一ヶ条では多用されます。正確に言うと、正面打ち一ヶ条抑えなら(一)の打ち込んだとき(二)で打ち込まれたときも腕の形は、構えと同じように剣の反りがあります。左右の肩甲骨は開いて円相になっています。円相の弾力を維持しながら螺旋状に擦り上げるようにします。

(一)の場合なら、構えは円相。打ち込んだときで擦り上げるときも円相。受を後ろ向かせて斜行で前進するときは、腕を伸ばす。受がうつ伏せになったときは、肩に重みがかかる動けないよう、腕は伸ばしている。

ここまでの解釈は、打ち込みあるいは打ち込まれ接触するときは、円相の腕と螺旋の動きでダイレクトに衝撃を受けないようにする。前進するときは、重心移動のエネルギーを最大限に伝えるために腕を伸ばす。肩を抑えるときも、重みが最大限になるように腕を伸ばす。

別の言い方をすると、見出しに「制空権」と書きましたが、この球体バリアは二重構造。

内側は、強い衝撃を、円相の腕で接点をずらして護ります。

外側は、真っ直ぐ伸ばした腕で重心移動のエネルギーや重みを前方や下に伝えて護ります。

この説明の仕方を、最後の抑え、極めのところに適用するとこうなります。受の右腕を抑える場合だと、こういうことかと。 左手で肘近くを抑え、上から真っ直ぐ垂直に重みをかける(外側の球)。それを受の指先の方に流す。そのとき仕手の腕は円相に近づいていく(内側の球)。

Dynamic AIKIDO

養神館の書籍でもこのことはあまり出ていませんが、海外向けの塩田剛三先生による『Dynamic AIKIDO』には、表現は違うものの明確に書かれています。正面打ち一ヶ条抑えの最後のところ。

The left hand allows the pressure to descend on it directly from above and then flow off in the direction of uke's right wrist. (i.e., the flow of power forms an "L".)

左手で圧力を上からかけてから、右手の手首の方向に流します。(すなわち、力の流れは”L”になる)

という訳でいいでしょうか。

それでも動かれてしまう場合は

このL字の力の流れによって、受は起き上がろうとしても指先の方に崩れてしまう。極端に身長差リーチ差があって、仕手の両膝が受の脇と手首にまで届かないなら、左膝で止めておけばいいということになります。

もっとも『Dynamic AIKIDO』では肘を抑えるとありますが、肘をターゲットにするととても危険です。それで稽古では肘よりも少し肩側を抑えるようにするのですが、そうすると圧倒的な体格差があると、動かれてしまう場合があります。

故寺田精之先生(養神館最高師範)が、海外でセミナーを開催されたときのこと。巨漢を一ヶ条抑えで抑えたところ、抑えられたまま動きだしたそうです。それでとっさに寺田先生が抑え方を変えられたということですが、どうされたかは後日公開するYouTube動画でご確認ください。精晟会の連携技です。

6/17公開しました。

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