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オンライン道場をやって分かった、テレワーク座りっぱなしの弊害


いい座り方

【想像以上に、コロナ自粛は身体に負担があるのかも】

先日、オンライン道場を行いました。

ずっと家にいてパソコンやスマホやテレビ、つまりモニターばっかり見ていたら、目ばっかり酷使して、脳が暴走しそうだなと思って、まず「のがれの呼吸」という調息を。

それから中心軸の作り方から構え、骨格的に強い肘のポジションなど、実際のところ合気道の稽古という以前に、いまの自粛生活に役立つ身体の使い方をやりました。

最後に質問はありますかと聞いたところ、女性から「中心軸は楽に立つということですけど、立つときはそれなりに感じられる。でも座ったときは力んでしまうんです。どうしてでしょう」と聞かれ、それに答えていると男性から「ずっとテレワークなんで座ってます。そしたら尻尾の名残の骨でしたっけ? 尾骨が痛いから、高いクッションを買ったんです」と言われました。

ああー、そういうことがあるのか。

座ることによる弊害は、オンライン道場の参加者で50%もの高確率で発生しています。参加者は、四人だけですけど(笑)

テレワークになった人たちに、座ることの弊害が出ていることは容易に想像がつきます。コロナ禍前から、一日中座りっぱなしでモニターに向っている人たちは、多くのトラブルを抱えています。

会員でもそういう人はいますし、体験にいらっしゃった強靭な肉体の元海兵隊員もそうでした。

ともあれ、今回のオンライン道場で出た話からです。

【どうして楽に立てるのがいいか】

立ったとき、どういう姿勢が正しいのか、多くの専門家が、だいたい似たようなことを提唱しています。違うのは、首と頭の扱い方。大別すると、頭をかなり後ろに引いてアゴを上げているパターンと、軽く前に傾げている姿勢とになると思います。

武道では立てなければ歩けないと言われたり、植芝盛平合気道開祖は歩く姿が武であるとおっしゃとか。とにかく姿勢はとても重要視されるのですが、細かく見ると、ちがうのです。

精晟会渋谷の稽古では、あまり細かいことは言いません。

最初にまず、頭が天から吊られているスカイフックのイメージで立ちます。踵を軽くトントントンと上下させて、自分が楽だなあと感じ、頭・胸・腰腹の重い3ブロックが揃っていると感じられればOKだとしています。

そこから準備体操として、スワイショウを行います。これで何をしているかといえば、中心軸を作りながら、できるだけ脱力して動くことを稽古しているのです。

正しい姿勢をこと細かく言えば言うほど、力んでしまう人の方が多いのではないでしょうか。

私はそう思っているので、細かいことより重力を感じてもらうことを重視しています。体感がなければ、いつも鏡に映してチェックしなければ、自分にフィードバックできません。細かな位置関係よりも、バランス感覚の方がだんぜん大切です。もちろん武道としても、健康的な日常生活のためにも。

それにただ立ったときの姿勢をどうこう言ったところで、日常にそんな場面は、まずありません。

歩く姿が武と開祖がおっしゃったのは、動くから技になるということだと思います。動くとは、重心が移動すること。その基礎としての立つを追求するのは意味がありますが。

動く前提で、姿勢を同コントロールするかなら、ざっくり縦に揃った状態を体感して、動きの中でもその感覚を維持できることが大切です。

ちなみに養神館では中心軸うんぬんとは、あまり言いません。中心線という言葉を頻繁に使います。技の最初が構えなので、中心軸がやや前傾しているのです。正面から見た場合、中心線は正中線と同じ意味だと思います。

丹田の考え方

上の画像は丹田と重心の関係を説明するのに作ったものですが、簡単にいえば、こういうことです。動きの中でも頭・胸・腰腹の重い3ブロックが揃っているとは、こういうことです。

座っているときの「正しい姿勢」「いい姿勢」というのも、この頭・胸・腰腹の重い3ブロックが垂直に揃っている

ことでしょう。しかし、座っているときと立っているときとでは、前提がまったく違います。

立っているときの正しい姿勢をいう人で、8時間も10時間もその姿勢を維持することを前提にしている人は、まあいないでしょう。8時間も直立しているなら、それは罰ゲームです(笑) 学校なら虐待として訴えられるかもしれません。

それに対して座っているのは、数分で終わってしまうことを前提にしても意味がないでしょう。

何時間も座っていることを前提にした、いい姿勢なんて存在するでしょうか。

【座骨で座るのが正しい?】

イスでの正しい座り方を調べると、座骨で座るというのが出てきます。骨格構造からすれば、そうでしょうね、と思います。立っているときと同様に、頭・胸・腰腹の重い3ブロックが垂直に揃えれば、座骨が座面に当たります。

座骨が当たらないなら、それは机にうつ伏せて寝ているような姿勢か、お尻を前に滑らせてふんぞり返っているのです。まあそこまでいかなくても、だらしないとか休んでいるとか、そういう姿勢です。

いちおう座骨だけではなく、骨盤周辺の骨格を説明しておきます。座骨の説明図が漫画的だったり、ちょっと上から見た図が多く、誤解されやすいかもしれません。

下の図は、私が仰向きに寝て撮影されたレントゲンに、ざっと骨の輪郭を描き加えたものです。仰向きに寝ていますから、後頭部からカカトまでが一直線です。

レントゲンの骨盤をイラスト化

次は レントゲンを外して、座骨を示しました。

座骨と恥骨

座骨はお尻の一番下に出ているのですから、真っ直ぐに座ればここの先端が当たるのは当然ですね。

次ぎに腸骨を外して脊椎だけにしています。

仙骨尾骨

ふたつの図を描いたのは、尾骨の位置を示すためです。

正面から見た場合、尾骨は恥骨で隠れています。恥骨は、股間のちょっと上。身体の前面を押すと骨の硬さを感じますよね。尾骨は背中側、お尻のカーブが股間に入ってくるところです。レントゲンを見ると、恥骨と尾骨はほぼ同じぐらいの高さにあります。

つまり恥骨と尾骨も座骨の一番下より何センチかは上にあります。ここが座面に当たるということは、ふんぞり返っている。お尻を丸めたような状態になっているのは確実です。

正しいと思われる座った姿勢から尾骨が当たる姿勢までも、描き起こしてみました。

正しい座り方から尾骨の当たる座り方まで

想像でしかないですが、尾骨が当たるのはCぐらいに机の下に潜ってないと無理そうです。

尾骨が当たるから痛いだけではなく、Cは腰椎に上半身の重い負荷がかかって痛めそうです。

正しいと思われるのは、Aの尾骨から頭までがほぼ垂直に揃っている姿勢。

しかし、もし頭・胸・腰腹の重い3ブロックを垂直に揃って、尾骨が座面に当たるように座っていたとして、それを数時間も維持できるでしょうか? 

立っているのでさえ、数時間維持するのは厳しいですよね。それでも足・足裏の構造は、立つこと支えることを前提に作られています。

対してお尻は、座ることを前提に作られているでしょうか? 

なかなか、そうとは思えません。座骨の下にどれだけ筋肉や脂肪があるかで個人差があると思いますが、しょせんはお尻なので、踵とはちがいます。

もし座ることを前提に作られていても、8時間も座りっぱなしになるのは、もしかしたら21世紀になってからかもしれません。

【座りっぱなしになるな、動け!】

第三次産業革命は、1980年代から始まり現在も続いているとされますが、パソコン・インターネット・ICTによって急速に進歩。つながりっぱなしと、ノートパソコンやスマホなどの携帯できるデバイスの登場によって、人間の擬似的能力強化が可能になったといわれます。

でもその擬似的な能力とは目と脳によるもので、それ以外の身体的能力は衰退しているかもしれません。座りっぱなしは21世紀になってからかもしれませんと書いたのは、そういう職種と動かないことを可能にする職場環境が増えてきたのがこの10年ぐらい。20年前だとほとんどないし、それ以上昔になると、やろうとしたところで、まずできなかっただろうと思うのです。

以前、会員から腰痛になったので稽古に行けないと聞き、仕事の環境について話をしていたら、ずっと座りっぱなしだというので、それは絶対にダメだ。会議室に行ったりするような会議とかミーティングはないの?と聞くと、まずないと答えたので、トイレは行くでしょ。トイレに行くなら、そのときに軽く身体をほぐすとかした方がいいんじゃないと言うつもりで尋ねると、トイレにもほとんど行かないというのです。

けっこう驚いて。たぶん10年以上前だと、プログラマーなど座りっぱなしの職業でも、ミーティングは頻繁にあったりして社内を歩いていたはずです。

今は IT系内勤職の多くがパソコンに向い、Slackなどでチーム内のコミュニケーションと作業を集約化するようになると、歩かない、社内で直接話す機会は少ないという仕事のスタイルが急速に拡大していたのかもしれません。

こういうスタイルが、コロナ自粛のテレワークでIT系以外でも急拡大し、一般化ているということでしょうか。

自分の経験では、20代30代のころ、1日中社内に籠って10数時間働くのも珍しくなく、完徹もけっこうしていました。

でも動かないなんてことはありません。なにか買いに行ったり、本や資料を探したりとウロウロしていたのです。それに姿勢良く座るなんてことはしていません。机に潜るようにしたり、足組んだりクネクネしていました。それは性格だといえば性格なのですが(笑)

だから会議もなく、トイレにも行かないなら、貧乏ゆすりしたり、座り方を頻繁に変えた方がいいと言っています。

【静止することが、どうしてダメなのか?】

もちろんピシッとしようとすれば、ピシッと出来ます。じゃないと、いろんな武道を続けたりできませんが、どう考えているかというと、静止するのがもっとも悪いと思っているのです。

養神館の構えの姿勢は、前足を外せば重力で前に出ていく姿勢であり、いわば動こうとするのを止めているのです。

武道の基本姿勢は、ほとんどが静中動、静中に動ありであるはずです。

小笠原礼法だろうが、ヨガや理学療法士や整体の人たちがいう「いい姿勢で座る」だろうが、何時間も椅子に座りっぱなしの状況なんて想定されていないと思います。

正座は、お尻の下にかかとが入ります。たぶん股関節の下あたりに踵が来るから、座骨はいわば宙に浮いた状態。

あぐらなどは、足の側面全体が床に着きますので重みが分散して、座骨だけに集中するなんてことはありません。

正座

実際のところ、近年、座りっぱなしの害に関するさまざまな研究が発表されています。

2002年、アメリカでは大統領の諮問機関「セデンタリー・デス・シンドローム」という言葉が作られました。糖尿病、肥満、心血管系の疾患などを引き起こし、死につながるそうです。

毎日長時間座っていると特定の種類のがんを発症するリスクが、単独ではないものの、高まる可能性があるそうです。

他にもいろいろありますが、広く注意喚起されているエコノミークラス症候群が有名です。

動作が少なく長時間同じ姿勢でいると下肢が圧迫され、血流が悪くなり血栓ができやすくなり、即死することさえあるというものです。これは窮屈なエコノミークラスに座っているからと誤解を招くので、欧米では旅行者血栓症という名称も使われているそうです。

【いい姿勢で座っていても、問題は出るはず】

オンライン道場のとき私は、どんなにいい姿勢でいたところで、長時間座っていれば必ず問題が出るはずだからと言いました。

書き起こした座り方の図のAは、頭・胸・腰腹の重い3ブロックを垂直に揃っているから他のところの負担は少ないだろうが、座骨が痛くなると思います。

太もものが圧迫されているから、エコノミークラス症候群と同じことは起こりうる。

さらには、この図では腕の存在をワザと無視していますが、仕事をしていれば、必ず腕は前に出ています。キーボードを叩いていれば、両腕とも出ています。腕の重さは、両腕で体重の約6.5%あるそうです。体重60kgなら、3.9kg。

腕を完全に浮かせてキーボードを打つなら、その間ずっと3.9kgを、構造的には肩を支点に支えていることになります。ボーリングのボールで女性向けの最も軽いものが4kg前後です。姿勢を維持しようとすれば、背中の筋肉でずっと引っぱっているのですから、凝らない方がおかしいでしょう。

モニターを見ているなら、頭も前に出がちだから、そうなるとなおさら背中が悲鳴を上げそうです。

重さを支えるバランスという観点からも、同じ姿勢を維持する長時間の座り仕事は異常なのです。

もちろん、B、Cの姿勢を維持していたら、もっと大変でしょう。Cの状態なら、上半身すべての重みのかなりの割合が、尾骨と腰椎に掛かっているかもしれません。部位別の重さなら、頭部は7%、胴体43%、上肢6.5%でトータル56.5%。体重60kgなら、33.9kです。

いずれにせよ、ピンポイントで重さが掛かる。それも長時間なのが、どうやっても良くない。そんな風に人間の身体はできていないでしょう。

1時間仕事したら、休憩10分とかではなく、ジッと座っていないことの方がはるかに重要です。

【動くのがイヤなら】

家なんだから貧乏ゆすりでも、頻繁に姿勢を変えたり、クネクネしたっていいと思うのです。

それがイヤなら、ゲーミングチェアを買ってきましょう。人体工学にもとづいた椅子というのは昔からありますが、レースカーのシートと同じ理屈なら身体のカーブに沿ってホールドして、加速によるGを分散させて支えるというものだと思います。

ただ私はオススメしません。

たぶん人体工学にもとづいた椅子は数時間あるいはそれ以上を想定しているかもしれませんが、習慣化したときの弊害を考慮していないかもしれません。身体をホールドして支えるなら、脊柱起立筋など姿勢を維持するための筋肉を衰えさせてします可能性が大です。

想像すると、骨折したときのギブスと同じようなものだと思います。

高い、高機能のクッションもどうかなと思います。

確かに座骨、ましてや尾骨・仙骨に痛みを感じるようなら大変です。ガードする方法がないと大変です。しかし、根本は時間と座り方。

オンライン道場のときに言ったのは、痛いのをクッションで和らげちゃうと、警告が分からない。尾骨はあまり痛くなくなるかもしれないけど、腰椎に掛かっている重みを無視できてしまうかもしれないと。

合気道をやっているなら、まず重力をどうやって味方につけるかを考える。そのためには重力のかかる方向を感じることができるようになって、敏感になること。じゃないと重みを伝達することができず、重みを掛けられることにも鈍感になってしまう。

さらに、感じるためには軸だけ維持して、あとは極力脱力することが必要です。

身体は、なにより固めないことが大切です。

それをしなければ、リモート生活は大変。

あたらしい日常が続くなら、この発想がきっと役立つはずだと思います。

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